「経済優先」が事故を招いたのか?

 マスコミの論調は、経済優先主義が事故を招いた、という。しかし以前の国鉄が残っていたら、今頃いったい何百兆の負債を国民は背負わなければならなかっただろう。また鉄道サービスはどうなっていただろう。その意味で、株式会社化し経済効率を考える経営に改めたことは、決して間違いだったとは思えない。国鉄のままなら、料金は大きく高騰し、ダイヤの利便性は高まらず、駅員のサービスは劣悪なまま(かつてひどい扱いを何度も受けた)だっただろう。もちろん、過疎地の路線の縮小は大きな問題だが、実際に利用率が低い以上保守などイニシャルコストのかさむ鉄路からバスへの移行は、費用負担の問題を考えれば致し方がなかったのではないか。実際に国鉄自体に随分と廃線は決まっていたのだから。

 さて今回の事故が本当に「経済優先」の為に起きたのか。今回の事故により、JR西日本は恐らく数百億からさらに上の桁の経済損失を受けるだろう。その費用があればATSの早期設置は簡単だったのではないか。
 経済優先ではなく、目先のコストばかりを見て事故時のリスクを考えず安全対策費を過少に計上していたツケが回ってきただけであり、結局経営者のミスでしかない、と私は思う。
 上述の日勤教育でも「経済優先」であれば、運転士を2週間も1ヶ月も運転からはずし、そこに教育者を付けて精神教育を行う、などというのは無駄なコスト以外の何物でもないだろう。以前の信楽高原鉄道事故でも、JR西日本は徹底して自社の責任を回避して3セクの問題にしたが、安全に関する上部の意識が低すぎたことは今回の事故に通じている。